休憩を始めて15分ほどが経過しチャラが熟睡から目覚め、スッと立ち上がり身体を伸ばして欠伸する。
普通の猫が寝起きで良く見せるあの行動だ。
「ふぁぁぁ、よく眠れた…ニャ?その様子だとカラスどもは無事に殲滅できたようだな」
座ったままチャラを見ていた結月がにこやかな表情をして訊く。
「おはよ♪、ねぇねぇ。チャラってどうやって人間の言葉を覚えたの?」
姿は普通の猫の20倍はあろう身体を持つチャラといえども動物である。
化け物カラスも然りだが、動物が人間の言葉を喋るという摩訶不思議な現実の違和感を結月は拭いきれないでいた。
「…オレのご主人様は、一軒家で一人寂しく暮らす年老いたばあちゃんだった。ばあちゃんは捨て猫のオレを拾ってくれてすご~く大事にしてくれてた。毎日寝ても覚めても一緒に過ごして、人間の言葉を喋れないオレに良く喋りかけてくれてね。ばあちゃんが話す言葉をずっと聞いているうちに覚えられたんだよ」
何故かチャラは結月に対してだけは素直になり、他のメンバーに見せるような反抗的態度は取らない。
「じゃあ覚醒したあとはそのおばあちゃんと会話ができたんだよね?」
結月と目を合わせながら話していたチャラが視線をそらす。
「いや…確かに覚醒はしていたけれど、ばあちゃんは心臓が弱い人だったから…びっくりさせちゃいけないと思ってオレは巨大な姿と人の言葉を隠して接していたよ。こんな風にね」
言い終えたチャラの身体がみるみると小さくなり普通の猫のサイズになった。
「わぁ♪普通の猫ちゃんになった!?」
猫好きの結月がチャラをサッと抱き寄せ頬擦りする。
「ん?でも、そのおばあちゃんは今どこにいるの?」
彼女の腕の中で目をつむり猫は答える。
「死んじゃったよ…呆気なくね」
「ご、ごめん!やなこと訊いちゃったね」
「別に良いよ…」
チャラが目を開け飛鳥井と匡に視線を向けた。
「オレのご主人様の最期を話すからあんた達も一緒に訊いてくれ」
「最初から全部聞いてるよ。でも辛い思い出をわざわざ話す必要はないんだぞ」
飛鳥井がそう言って隣に座る匡が黙ったままコクンと頷き同意する。
「いや、ばあちゃんは寂しい人だったけれど、とても優しくて良い人だったんだ。そんなばあちゃんのことを少しでも誰かに伝えたいし、オレがどれだけカラスの奴らを憎んでいるか知っておいて欲しいからやっぱり話すよ」
「そっか…うん、なら、そのおばあちゃんを弔うためにも聞いておこうか」
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