万能にも思える瞬間移動能力に弱点があると訊き、結月が興味津々といった顔を近づけ更に問う。
「わたしに弱点なんて無いように見えるんだけどなぁ。その凄い能力にどんな弱点があるって言うの?」
飛鳥井が僅かに怪訝な表情になった。
味方といえど、自身の能力の弱点を晒すのは抵抗があるのだろう。
「……ずっと俺の動きを追っていれば分かることなんだけどね。ん~、まぁいっか。時間にして一秒も掛からない現象で相手にわかっちゃうんだよ。現れる場所が…」
結月だけでなく、匡も俄然興味を示し身を乗り出して飛鳥井の次の言葉を待つ。
「……二人とも少し離れてくれないかな?興味があるのは理解できなくもないが近すぎる」
「あっ!?ごめんなさい」
「すみません」
二人は気付かぬうちに鼻息が届かんとする距離まで近づいていたのだ。
飛鳥井に指摘されて二人が若干の距離をおく。
「説明するより実践した方が伝わるだろうね。今から君達の背後に瞬間移動するから俺が消えた瞬間に後ろを振り返ってくれ。じゃあやるよ~♪」
「ヴン!」
飛鳥井が目の前から消えた瞬間に二人がサッと後ろを振り向くと、そこには既に飛鳥井の姿が現われていた。
「どうだい?一目瞭然ってやつだったろ?」
二人はさっぱりといった感じで頭上に「?」マークが浮かんでいるかのような顔になる。
「飛鳥井さん。申し訳ないけど全然分からない」
「えっ!?そう!?あれれ、思ったより長くないのか…」
いっときの間をおいた飛鳥井が口を開く。
「うん、まぁあれだ。自分で思っていたよりもラグの時間は無さそうだ。もう口で説明しちゃうとだね…まず消えるだろ。んで移動したい場所へ出現するときに時空の歪みが起きてる筈なんだよ。だから二人にはその歪みを見て欲しかったんだけど…」
分析の得意な飛鳥井にしては珍しく、自身の使用する能力を上手く分析できずに歯切れが悪い。
その理由は、チームメンバーの中でも彼の能力がかなり特異な部類に属するためだった。使い手の本人がなかなか分析出来ずにいるのは、常識や固定観念からなかなか抜け出せずにいるからであったが実はほぼほぼ正解を出している。
完全に分析できないのは瞬間移動する際に、本人と現実世界の時間の流れが異なることに他ならない。
あとはそのことに気付けば…
「考えるのやぁめた!俺の能力については今度八神さんにでも分析してもらうことにするよ。うん、そうしようそうしよう」
彼は拍子抜けするほどあっさりと諦めた。
コメント