「二人ともっ!俺につかまれ!」
猛スピードで向かって来るリーベをやっと目視した飛鳥井が咄嗟に二人へ呼び掛け、匡が右肩、結月が左腕をサッと掴む。
「ヴン!」
体勢を低くし身構えるチャラを残して、三人が瞬間移動でその場から消えた。
「雷鳴!神ちぎり!」
チャラが技の名を口に出した直後!
「グァッ!!!」
「カッ!!?」
勢いそのまま400kmを超える速度で突っ込んで来たリーベに合わせ、チャラの真上を通り過ぎようとした彼女の頭を電光石火の速さで噛みちぎった!
「ボォゴォッ!!!」
頭を失ったリーベの身体が家屋の屋根を突き抜け遠くまで飛んで行く!
そして、神技としか言いようのないことをやり遂げたチャラの口には、まだ脳が死なずに働いているリーベのカラス頭が加えられていた。
「カッ。な、何が?…」
我が身に何が起こっているのか理解できないリーベが力無く言葉を発し、チャラが頭を噛む顎の力を緩め、灰色のスレート屋根の上へ「ボトッ」と雑に落とす。
転がったリーベの頭へ向けてチャラが言う。
「オレがあんたの頭を胴体から切り離した。ただそでれだけのこと。あんたの仲間に殺されたオレのご主人様と違って楽に死ねるんだ。ありがたく思いな」
「カ、カァ……………」
カラス軍幹部四人衆が一人「超スピードカラス」のリーベ。最期は人間の言葉ではなく、カラスの純粋な鳴き声をか細く出し、登場から100字の言葉を発することも出来ずにその生涯を閉じた。
目を開けたまま無惨な姿のリーベを見ても、チャラに哀れみの感情は微塵も生まれない。
彼の心に今あるのは、化け物カラスの集団にゆっくり時間をかけ、残酷に殺された飼い主の無念を少しでも晴らせたという喜びだけである。
この復讐心はカラス軍の全滅が達成されなければ完全には消えないだろう。
「おお!猫くん凄いじゃないか!大金星だぞ!正直に言うとお兄さん君のことを舐めてたごめん!」
一度瞬間移動で別の家屋へ避難した三人がいつの間にか戻り、飛鳥井が馬鹿正直にチャラに声を掛けた。
「お前、お兄さんつっても二十代前半だろ?オレも人間の年齢で言えば20を越えてるんだぞ。ガキに話しかけるような口の利き方をするな。それとオレには飼い主に貰った『チャラ』っていう立派な名前があるんだ。ちゃんと名前で呼べ」
亡くなった飼い主に付けられた名前を大事に想うチャラが不機嫌な口調で返した。
「そ、そっか。なんだか、本当に悪かったなチャラ」
いつも飄々としている飛鳥井が、真剣な表情になり頭をしっかりと下げて謝った。
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