八神達が北から西へ向かった頃より少し時は戻る。
アジトから東へ向かった飛鳥井達は、カラス軍幹部四人衆唯一のメスというか女性というか、とにかもかくにも頭はカラスそのものだが、身体は人間のグラマラスな女性という表現がしっくりなリーベ率いる200羽の部隊と臨戦体勢に入ろうとしていた。
飛鳥井、匡、結月に覚醒猫のチャラが二階建て家屋の屋根上でそれを迎え撃つ。
真っ直ぐ飛鳥井らの待ち構える場所を目指してリーベの部隊は飛んで来るが、距離にしてまだ千メートル以上はある。
「さて、敵の情報がいまいち分からないわけだけれど…君たち、俺が状況によって逐次支持するから何時でも能力を発動できるように集中してくれ。あと、余り仲間同士で離れずに戦うこと。いいね」
「「はい!」」「…………」
向かって来る敵方向を眺めながら柴門が話し匡と結月の二人は即座に応えた。が、同じく敵方向をジッと見つめる覚醒巨大猫のチャラが返事をしない。
「おーい猫くん猫くん、チームに加わったからにはチームワークというものを大切にしてもらわないと困るよぉ。返事くらい一秒もあればできるだろ?」
「……….ニャ、分かった。ところで一羽だけ猛スピードで突っ込んで来る奴がいるぞ。あいつ倒していいか?」
「えっ!?あ、ああ、ん!?…」
チャラの方を見て困った顔をしながら話す柴門に対し、カラス部隊の異変に気付いたらしい猫は視線を変えずに答え、ヒョイッと軽く跳躍し三人の前へ盾になるかの如く躍り出る。
元来、猫という動物は人間のそれよりも視力が悪い。しかし覚醒猫のチャラは「神の戒告」の恩恵を他の動物と比べ大いに受けており、今やその視力は10.ooを優に超えているのだ。
「超爆電気」
「ヴァリヴァリヴァリヴァリーッ!!」
以前発動させた技名に敢えて「超」を付け、叫ばずにボソッと口にした途端に凄まじい音を立てチャラの身体が電気を帯びる。
その電気量は前回発動させた時の何倍もあるようにさえ見えた。
チャラが「突っ込んで来る奴」と表現したのはカラス軍幹部のリーベである。
彼女?が覚醒で取得したものは人間の身体だけでは勿論なかった。それは他の化け物カラスや幹部は当然のこと、あのカラス王カラハグの何倍ものスピード能力だったのである。
普通のカラスの飛行速度は速くても60kmほどだという。
だが、飛鳥井達に向かって飛ぶリーベの飛行速度は400kmに達しようとしていた。
分かりやすいように言うならば、F1マシンに匹敵する速度ということになる。
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