カラスの割に真っ直ぐな性格?のキガイが柴門に言われた通り、自身の周りをキョロキョロと見渡す。
「なっ!?オレ様の羽根が綺麗に消えている。いったい何処へ行ったのだ!?」
半径50mほどに広がり舞っていた千を超える黒羽根が、僅かの間になんと一つ残らず無くなってしまっていたのだった。
この現象はマンションに潜む美琴の仕業だったのだが、もちろん柴門は気づいている。
「どうだ!俺の二つ目の能力『吹き飛ばし』は!一瞬でてめぇの技を無力化してやったぜ!」
美琴の仕業というのは当たり前だがしっかり伏せ、適当に能力名をつけて得意げにあたかも自らの能力で起こした現象だと言い放った。
「『吹き飛ばし』能力だと!?」
「そうだ!うっかり口が滑っちまったけどな!ハッハッハッ!てめぇの羽根は幾ら出現させても全部吹き飛ばしてやるぜ!」
柴門は必要以上に大きな声で敵を煽った。マンションに潜む美琴にも声が届くように。
「……一つ疑問がある。そんな能力があるならなぜ羽根に囲まれた時点で能力を使わなかったのだ?」
予想していなかったツッコミに柴門が微かに狼狽し、後頭部に両手を当てて口笛を吹くように口の形を変えて返答する。
「ふ、ふん。奥の手ってやつはギリギリまで使わないもんさ」
「…….なるほどな。馬鹿で愚かな人間でもそれくらいの知恵は働くということか。まぁいい、羽根なら幾らでも量産できる」
「能力の使い過ぎはお勧めしないなぁ。そのうち翼がハゲるぞ」
「ハゲるかっ!どうやらオレ様の技を恐れているようだな!カッカッカッ!『吹き飛ばし』の能力とやらでもう一度吹き飛ばせるのならオレ様の目の前で見せてみろ!ブラックフェザーレイン!」
キガイ叫びたった今繰り出した技を再度繰り出し、先ほどと全く同じように翼から次々と羽根が飛び出して空高く上空へと舞い上がって行く!
だがここで、かなりの高さまで舞い上がった羽根に異常が起こる!
「おっ!?おりゃぁぁっ!ふっ吹き飛べやあぁぁ!!!!!」
「カァッ!?」
先ほどと同じパターンであれば舞い降りて来る筈の羽根が上空で一瞬奇妙な動きを見せ、それを見ていた柴門が慌てて能力を発動した体で叫び、同じく様子を見ていたキガイが間抜けな声を上げた。
羽根の舞い上がるスピードは衰えず、そのまま大気圏に向かって遂には見えなくなってしまった…
「ど、どうよ!俺の能力の味は!?」
もとより能力に味などあろう筈は無かったのだが、彼は若干焦っていたらしい。
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