「カッ!?馬鹿かお前は!?」
柴門のあまりにも無防備な現れ方にキガイ呆れた。
「うっ、うっせーーーっ!俺とサシで勝負だデカブツ!」
無計画にもほどがある奇襲が失敗し、半ば八つ当たり気味で吠えた。
「カッカッカッ。これは笑しな。人間如きがオレ様とたった一人でやり合う気か?まぁ良いだろう。後ろにもう一人が控えているのは見え透いているがな。喰らうがいい!オレの能力唯一無二の攻撃技、ブラックフェザーラッシュ!」
どうやらキガイはそれほど知能は高くないのかも知れない。
確かにこのカラスの能力は己の羽根を無限に増殖させ、それを自由自在に操る「ブラックフェザー」なる能力であり、能力の素材が自らの羽根だけあって固くなく鋭利なものでもなかったため、防御技は複数あれど攻撃技は一つしか持たなかったわけだが、敵にわざわざ教える道理は無いだろう。
それはさておきキガイが翼を広げ、、「ブラックフェザーラッシュ」は発動した。
「ビシュシュシュシュシュシュッ!」
広げた翼から次々に羽根が生まれ柴門目掛けて飛んで行く!
「おっ!?遅えぇ…」
空中を飛ぶ羽根の速度は恐らく時速にして30kmも出ていないのではなかろうか。自身の技より遥かに遅い技を前にした柴門がゆっくり歩いて避けた。
避けた場所を「ブラックフェザーラッシュ」なる技が完全に的を外し通りすぎる。
「……….カッカッカッ!オレの技をいともたやすく避けてしまうとは褒めてやろうではないか!」
無表情なキガイが一時の沈黙のあと無理に笑い無理に言葉を繕った。
棒立ちの柴門が半ば呆れ顔をして言う。
「てめぇ。まさかとは思うが今のが本気の技ってわけじゃないよな?」
「………….」
キガイが無表情でただただ沈黙し、「チーン」と音が聴こえて来そうな空気が漂う。
柴門が間抜けな姿の現した時からここまで、ピリピリとした戦闘とは程遠く緊張感が全く感じられないシーンとなってしまった。
「…………..カッ!?カッカッカッ。カーカッカッーッ!安心しろ。たった今思いついたがこの技はこれで終わりではない」
不気味で巨大な容姿に反し、実直なのかただの馬鹿なのかまた余計なことを口走るキガイ。
そんな敵の様子からして「こりゃもしかして俺一人で片付くんじゃね?」などとという考えが頭に浮かぶ柴門。
「はいはいオッケーオッケー。んじゃ、たったいま閃いた技の続きとやらを見せてみろよ」
彼はこの戦闘に本気で余裕を持ち始めていたのだった。
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