「くっ、こりゃ酷い匂いだ…息苦しいぜ」
右腕で鼻を押さえ、化け物カラスの焼けた匂いに耐えながら柴門が呟いた。
全て焼き尽くされるのを待つ八神は鉄錬金で生成した鉄の網を解こうとはしない。
やがて炎が見えなくなり、小さくプスプスと音を出す化け物カラスの焼死体が崩れ始め、灰がパラパラと地上へ降るように落ちていく。
もう大丈夫なんじゃないか?と思った柴門が電波塔を降り、まだ能力を発動したまま集中して上空を眺める八神に声をかける。
「八神さん、火も見えなくなったしそろそろ良いんじゃねぇか?ずっと能力使ってたら身体が参っちまうぞ」
「……そうだね。このままだと僕の能力が尽きてしまうかも…柴門君の言う通り一旦錬金術を解除するから、そのあとに大事が無いよう備えておいてくれないかな?」
柴門の提案を暫く黙って考えていた八神は、能力を使い果たす前に解除して力を温存することに決め、一つの懸念があり注意喚起した。
一つの懸念。それはカラス達の指揮を執る実力者の幹部が、こうもあっさり倒せるはずが無いのでは?というものだった。
しかし、このままの状態を続けていても意味がない。そう判断した八神が腕を下ろし鉄の錬金術を解く。
鉄の網は1秒とかからずスッと消えて、直径30m以上にも及ぶ化け物カラス達の死骸の塊が地上へ真っ直ぐ落ちる。
「ズガガァーーーーーーン!!!」
死骸の塊がまるで火山の爆発を想像させるような爆音を上げ、砕け散り、灰を乗せた爆風が周囲に吹き荒んだ。
「ぶふっ!?」
「うっ!?」
八神と柴門の二人が咄嗟に顔を両腕で守るも、爆風に乗った灰が目や鼻などの部分に入り息苦しくなり、辺りも舞った灰で真っ黒な霧が如く立ち込めてしまった。
「やべぇなこの灰は。これじゃ何にも見えねぇ」
「ごめん、こうなることまで計算しておくべきだったね…もし奴らの幹部が生きていたらこの状況は不味い」
「謝らなくて良いし。灰で辺りが見えないのは相手も同じじゃねぇか?まっ、俺は油断しちゃいねぇけどなっ!!!」
急に言葉尻を荒げた柴門が後ろを振り向き、発動させていた光球を飛ばした!
「ヴォン!」
柴門が光球を飛ばした方向10mほど先で、雷雲が光るようにな現象が起こり何かが被曝する音が聴こえた。
視界の悪さにより完全に特定出来ない場所から低い声が響く。
「カカカッ。人間の分際でよく気づいたな。褒めてやろう」
二人にはまだその姿を確認することは不可能だったが、声の主の正体は、八神の恐れていたカラス軍の生き残りである幹部のキガイであった。
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